『21ブリッジ』チャドウィック、じゃない戦友よ、さらば(ネタバレあり)
前回の更新から1ヶ月経ってしまいました。
読んでいただいてる皆さんには、アフガニスタンで戦死したんじゃないかと思われていそうです。
一応、先月の戦地からは基地に戻ったんですが、本国への帰国は叶わず、相変わらずアフガニスタンの別の場所で戦っております(前回の記事を読んでる人以外、意味のわからない文章)。
更新が途絶えていたのは忙しかったのもありますが、ちょっと書けなくなってたんですよね。
今回の『21ブリッジ』、どうしても観たくてコロナ対策万全にして川崎まで観に行ったんですが(東京の映画館が閉まってるから)、帰ってきて「さあ書くぞ」と200文字ほど書いたところで、ぱったり書けなくなっちまいました。
「ブラックパンサー」のチャドウィック・ボーズマンが主演・製作を務めたクライムミステリー。マンハッタン島で強盗事件が発生し、銃撃戦の末に警察官8人が殺害された。捜査に乗り出したのは、警察官だった父を殺された過去を持つデイビス刑事。マンハッタンを全面封鎖して犯人の行方を追うが、事件の真相に迫るうちに思わぬ事実が浮かび上がる。孤立無援となったデイビス刑事は、事件の裏に潜むニューヨークの闇に立ち向かうが……。共演は「アメリカン・スナイパー」のシエナ・ミラー、「ビール・ストリートの恋人たち」のステファン・ジェームズ、「セッション」のJ・K・シモンズ。製作には「アベンジャーズ」シリーズのアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟監督が名を連ね、「ゲーム・オブ・スローンズ」などテレビドラマを中心に手がけてきたブライアン・カークがメガホンをとった。
この映画は、昨年亡くなったチャドウィック・ボーズマンの、劇場公開作品としては遺作にあたります。役者としてこれからという時期の死なので、私も色々思うところはありましたし、わざわざ遠出して観に行ったのも彼観たさです。
だから、観終わってチャドウィックについて書き始めたのも自然な流れでした。いや、自然な流れのつもりだったのですが、全然書けない。
どーーーーーしても書けない。
そこですっぱり諦めて他の映画のことでも書けばよかったのに、どういうわけかそれもできない。この映画のことを書きたい欲求は強くて、他のことを書く気になれないんです。
それがなぜなのか自問自答しながら三週間近く。ついに衝撃の真実と向き合ってしまいました。
私、チャドウィック・ボーズマンについて書きたいわけじゃなかったんですよ、実は。
あ、いやいやいや。
この映画のチャドウィック・ボーズマンはどうだった?と聞かれれば、いくらでも熱く話せますよ。
でも、あくまで誰かに聞かれれば、あるいは、お題目としてもらったら、の話。自発的に書きたいネタかというと、違う。
なのに、彼のあまりに早すぎる死に影響されて、「彼について書かんといかん」と、無意識に自分に枷をはめていたらしい。
そりゃ書けなくなるわな。
映画をネタに好き勝手なことを書くのが楽しいのに。
ということで、チャドウィックについて書かれたものが読みたい方は、いつものように他のちゃんとしたブログに行っていただき、私は我が道を往かせていただきます!
いやー、まさかの戦友との再会、テイラー・キッチュ!
上が『21ブリッジ』のレイ役ですが、彼、『ローン・サバイバー』でマーフィー大尉役(下)を演じてたんですよ。現実の大尉(元同僚)が転勤していって10日でしたから、二重に感激しまして(これまた前回の記事を読んでないと意味不明)。
だからねー、彼の所業にびっくりでした。
強盗自体はいいんですが(いいのか?)、大都会ニューヨークだというのに、戦場のように躊躇なく相手を殺していくんですよ。
お前、致命傷を負いながらも、基地との通信を確保するため、命懸けで山頂に上るような勇敢な男だったのに!!(『ローン・サバイバー』だっつーの)
冒頭のチンピラ感満載の会話から、一瞬にして戦闘モードに切り替わったところは、思わず身を乗り出しちゃいましたよ。「敵と見なしたら殺る」というのが第二の本能となってるんですね。
実は、そこで初めてテイラー・キッチュだと気づいた次第。そのシーン、目しか出てなかったのに、わかった自分がちょっと怖い。
どんだけ脳内で『ローン・サバイバー』再生してたんだよ。
別にテイラー・キッチュのことは、さして好きでもなんでもないんです(ひどい)。
そこそこハンサムなんですが、『バトル・シップ』*1や『ジョン・カーター』*2を観る限り、正統派の主演を張るには微妙。
でも軍人役が多いせいか、銃の構え方とか動き方とか、本物?と思いたくなるほど板についてて、そこは結構好きです。
で、そっちにばかり目がいって、演技がどうだったのかはいつも定かではなく(ひどすぎる)。
でも、チャドウィックとの撃ち合いシーンは良かったなあ。
物陰から撃ってくるチャドウィックに対し、キッチュは隠れもせずに真っ直ぐ立って、でも相手に体の正面は向けず、撃ち続けてチャドウィックを確実に足止め。この、的になる体の表面積を減らして被弾を避ける、っていうスタンス、実用的かつビジュアルとしてもカッコいいじゃないですか。
しかしチャドウィックの射撃も見事で、結局キッチュは腹に一発食らい……。
でも、被弾してるのにあれだけ動けるところがもう、私好みの戦士・オブ・戦士。
もうね、最後の力尽きた姿には、すっかり戦友のなれの果てを見ているような気になって半泣きです。
現実世界における私の戦友も、有能だけど正義感が強い上に若干キレやすく、転勤しても「ここの部署、こういうとこ、おかしいだろ!?」とメールが来ます。
文面から推察するに、怒りを感じた瞬間にメールして発散しているものと思われます。戦友の今の立場では、職場でキレるとパワハラと言われかねないので、私は肯定しつつもなだめる返信を送ることに努めてはいます。
が、所詮は類友。
私も奴と同じくらいキレやすい上に「慇懃無礼」が金科玉条なので、果たして常識的な方たちからみて穏やかな返信になっているのか、その辺は自信がありません。キッチュの殺人を止められない弟分役の、ステファン・ジェームズみたいなもんです(いい方に回るな)。
いやはや。
帰還兵にはカウンセリングしてケアしないと、環境の変化に適応できないっていうの、ホントわかるわ。
テイラー・キッチュの死に顔が、他人事とは思えない。
どうせ死ぬなら、会社じゃなくてチャドウィックのような高潔な相手に殺されたい。