前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

雑誌『映画秘宝』についての会社員で読者で女の私のとりとめのない愚痴

今週、映画好き界隈を騒がせた雑誌『映画秘宝』のDM問題の件、ことのあらましを引用するなりして書くべきなのだろうけど、それを文字にして残すと自分のメンタルへのダメージが半端ないので、Twitterとかしないので知らないよ、という方は、この記事スルーしていただくか、検索していただければ。

ただ、私が、気持ちを文章にして吐き出さないと辛いので書いてます。
自分でも驚くほどショックを受けているので、自己陶酔かよと自分でツッコみたくなるんですが、ちょっと今月号が凄く嬉しかったので、落差が……。

いま、読み返したらえらく長いです。ほぼ、自分語り(それはいつも通りか)の愚痴です。すみません……。

 

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まず、会社員の私として思ったこと。

今回の不祥事に対する対応(謝罪文の発表)が、①不祥事の当事者②秘宝③出版社、と、私の知る限り3つでているのだけど、①は論外、②はお粗末としか言えません。
組織としてというより、内輪向けの言い訳にしか見えなかったから。
簡単に言えば「その文章、表に出す前に弁護士に見せたの?」と思ったんですね。

うちの会社だと、社内外のトラブルや不祥事が発生した場合、法務か人事に相談します。場合によっては法務・人事経由で、社が契約している弁護士にも相談します。
相手方と会ったり文書を交わす際には、弁護士に同席、添削してもらうこともしばしばです。

これは、企業の謝罪はテンプレだとか、誠意があるとかないとかってことではありません。
相手の心情を組んだ謝罪になっているか、企業の意図が誤解なく伝わる内容になっているか、企業として勘違い、意識不足、対策不足の点はないか、法務部門なり弁護士なり専門家にチェックしてもらう、ということです。
まあそれを、訴訟になるのを避けるためだろ、と言われれば、それはそれで間違いではないんだけど。

しかし、そういうシステムを作っていても、現場ってなるべく内輪で解決しようとする傾向があるんですよね……経験値高い人ほど。
私の部署は会社の中核にあたるところなので、現場のトラブル報告も各種集まってくるんですが、何度「ちょっと待った!法務or人事に確認するから!」と現場を止めてきたことか。
たまに事後報告(何とかしようとして現場の手に負えなくなった)もあって、そのときは上司がブチ切れます。

それはともかく、そうした私の経験から言えば、③は「第三者がみている内容だな」と思いました。
もし②の内容を弁護士や法務の専門家に見せてOKが出てたのなら、契約解除するなりした方が……仕事できてないから。

そして、コンプライアンス教育して。思想とか誠意の問題じゃなくて。俺は分かってるとか思いこまずに、外注してでもコンプライアンス教育して。いまの時代、企業の必須スキル。
で、過労が原因なら、出版業界、本気でメンタルヘルス考えて。
ま、うちの会社も、コンプライアンスメンタルヘルスもヤバいから、よそ様の業界のこと言えないけど!

と、ここまでは、会社員の私の話。

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ここからは、一読者としての私の愚痴です。
意見ですらありません、自分語りです、愚痴です。

私は、毎号とは言いませんが、少なくとも大判になってからの『秘宝』は比較的読んでいた人間です。なので、映画好きの中二病男子っぽいノリが中心(ほとんど?)だった時代からの読者です。

そして、私は女性です。秘宝に載っているような映画を、好んで観ている女性です。

私はアクション映画もバイオレンス映画も、B級映画も好きです。
例えば、『レッド・スコルピオン』でドルフ・ラングレン、『サイボーグ』でジャン=クロード・ヴァン・ダムが好きになり、『ユニバーサル・ソルジャー』は眼福という女性です。
『エクスペンタブルズ』はスタローンより、ドルフ・ラングレンが目当てで観たんだよ! ヴァン・ダムも出た『2』は祭りだったよ!

だから、マチズモ的なる(と、一括りにされてしまう)ものを好む傾向は、私が社会生活で刷り込まれたわけでも、男性社会で生きてくために無理に身に着けた擬態でもなく、元々私の中にもあるものの一つなんです。

でも私は女性です。そこが、私が生きてく上でややこしい。

社会生活を送る女性として、マチズモに怒りを覚えることはしばしばです。女性が不当な目に遭うことに腹を立てる、一女性です。
昔は、秘宝に載るような映画を観に行けば、観客で女性は私だけ、なんてことはザラでした。地方だったのでなおさらです。何か勘違いした男性客からナンパされたり、痴漢されたこともあります。
そういうのが嫌で、アクション映画は好きだけど映画館にはいかないって女性、たくさんいたのかも。

男性的なものが好きな自分、でも女性である自分の間で、私はいつも自分の立ち位置がグラグラしてました。
男性と話している方が話題が合うので楽しいけれど、男女の社会的な話になると急に疎外感を感じます。女性と話していると異物のように見られることが多いけど、生きづらさを共有できるのは女性同士です。
男性と同じような目線で女性を過剰に批判したり、逆に男性に対して過剰に攻撃的になっていた時期もあります。

最近若い友人が増えて新しいモノの見方に気づいたことで、やっと、男だ女だという二極の立ち位置ではなく、私は「しのぶさん」という個体でいいんだなあと、思えるようになったところです。
このブログで事あるごとに出してます、「前世が男で戦士だった現世女性」っていうは、ネタどころか私を解放してくれた言葉でもあるんですね。

そういう私ですから、ここ数年の『映画秘宝』は、まるで自分を見ているようでした。
マチズモ一辺倒から脱却し、時代の変化に合わせてアップデートしようと、危なっかしい足取りながらも変化していた雑誌です。男女の問題に限らず、映画を通して色々な社会問題にも切り込んでいっていました。
内容も、それに関わる人々の発言も、女性として嬉しくなることもあれば、カチンとくるところもありつつ、その変化しようとする姿が好きでした。

21年3月号の表紙は最高でした。壁に貼ってます。
ワンダーウーマン1984』のダイアナ、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』のハーレイ・クインが真ん中にドーン!
脇を『オールド・ガード』のアンディのセロン様が締め、足元をマ・ドンソクとコブラ会ががっちり支えている。
これ、これ、女性性と男性性の間でゆらっと生きてる、私の理想やん!

だから、だからこそ、今回の『映画秘宝』の不祥事は、その内容も対応も、私の好きな『秘宝』からあまりにかけ離れていて、ただただ悲しい。
いままでの『秘宝』は何だったの? って、思ってしまう、どうしても。

ついでに言えば①②③後の、町山さんの「瀬戸際」発言はさらにトドメで。
一部で被害者の方への誹謗中傷が行われるという呆れた事態になっているので、誹謗中傷はやめて、と町山さんはtweetされていました。やめて、と訴えること自体はいいのだけど。
それを、雑誌存続の瀬戸際だから存続を望むなら誹謗中傷やめて、としかとれないニュアンスで発言していて。
いや、被害者の方のためにやめて、でしょう? 雑誌のため?
雑誌存続のため? え?

それに、私は『秘宝』の「読者」だけど、『秘宝』の「スタッフ」でも「仲間」でも「身内」でもない。
『秘宝』は商業誌だ。どこかでそれを忘れていないだろうか。
私は、私のために『秘宝』を買っているだけだ。
私が読みたいから、休刊になった時は悲しかったし、復刊に向けて努力をしている姿を応援してもいた。

でもそれは全部、私のためで、『秘宝』を作っている人たちのためじゃない。
雑誌存続のために信頼を取り戻すのはあなたたちの仕事で、読者の仕事じゃない。

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3000字以上書きなぐったけど、怒っている、というより、私は悲しんでいる。
この件、批判している人、擁護する人、怒っている人、色々いるけど、私はというと「悲しんでいる人」だ。
やり場のない思いというのは、大抵は「悲しみ」なんだろう。

まだ悲しいけど、その悲しさを癒してくれるのも、壁から私を見降ろしてくれる(わざと高い位置に貼ってる)ダイアナとハーレイとセロン様で。

この件は、もう脇におこう。そして映画を観よう。
つまるところ、私が心底愛しているのは「映画」であって、「映画雑誌」ではないのだから。