前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』ジェームズ・ボンドよ永遠なれ(一番肝心なところのネタバレあり)

f:id:sinok_b:20211123024444p:plainなぜ、私たちは007シリーズを観るんでしょうか。

スパイ映画アクション映画、この世には山ほど007のような、そして007より出来のいい映画は山ほどあるのに。
なのに、007と聞いただけど、どうしてこんなに気持ちがざわめくのか。

緊急事態宣言が明けて、通勤時の狂った混雑が戻ってきた最近の東京です。
大分体調が戻ってきていた私でしたが、まだ死んだ魚の目のような会社員の群れとともに電車に乗れる状態ではなかったらしく、通勤時に冷や汗や動悸や吐き気が出るようになった今日この頃。
通勤は時差出勤でなんとか乗り切ってますが、それにしても急に増えた人の多さにエネルギーを取られ、お陰で観たい映画は山ほどあるのに、映画館に行く気力のでない日々。

でもね、これは、『007』は、観にいかねばならぬのですよ。

ジェームズ・ボンドの活躍を描く「007」シリーズ25作目。現役を退きジャマイカで穏やかな生活を送っていたボンドのもとに、CIA出身の旧友フィリックス・ライターが助けを求めにやってきたことから、平穏な日常は終わりを告げる。誘拐された科学者を救出するという任務に就いたボンドは、その過酷なミッションの中で、世界に脅威をもたらす最新技術を有した黒幕を追うことになるが……。ダニエル・クレイグが5度目のボンドを演じ、前作「007 スペクター」から引き続きレア・セドゥーベン・ウィショーナオミ・ハリスロリー・キニアレイフ・ファインズらが共演。新たに「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」のアナ・デ・アルマス、「キャプテン・マーベル」のラシャーナ・リンチらが出演し、「ボヘミアン・ラプソディ」のフレディ・マーキュリー役でアカデミー主演男優賞を受賞したラミ・マレックが悪役として登場する。監督は、「ビースト・オブ・ノー・ネーション」の日系アメリカ人キャリー・ジョージ・フクナガ。

2021年製作/164分/G/アメリ
原題:No Time to Die
配給:東宝東和
(映画.comより)

なぜ観に行かねばならぬのか。
「007」が好きとかファンだとか、そういうことじゃないんです。
あ、いや、好きよ、好きなんだけども。
でも私が一番好きなボンドはやっぱりショーン・コネリーで、コネリー以降のボンドは顔が好みじゃないとか老けてるとかタキシードがイマイチとか優男だとか、失礼千万なケチをつけるような心の狭いヤツなんです。
そのくせ、映画館での鑑賞は覚えている限りでは少なくとも『美しき獣たち』からは皆勤賞で、それ以前の作品も当然ながら全部観ているわけで。シリーズベスト(ちなみに『ロシアより愛を込めて』。自分でもベタすぎると思う…)は答えられても、ワーストはないし。
なのに決してマニアではないので何が語れるわけでもなく、そういうことが読みたい方はこんな駄文読むのはやめて他の方のブログを読んでいただいた方がいいですよと言ってしまう程度のヤツではあるんですが。

でもともかく、その程度の私でさえ、人混みがツライとかそういうことは、新作の007を映画館で観ない理由にはならんのです
だからといって、観なければいけない理由は何なのか、と聞かれると答えにつまる
とにかくそういう映画なのです、『007』は。

クレイグ版ボンドは、当初世界中がケチをつけた金髪碧眼ボンドなんて!という姿形は、私はまったく気にならず。
正直いえば、顔より体に眼がいっちゃってて。体だけなら、コネリー以来の大ヒットだ!と、思ってたんです。
ところが1作目の『カジノ・ロワイヤル』を観たら、ユーモアのないボンドに世間とは逆にちょっと引いちゃって。
世間が絶賛した部分に違和感持ってしまうなんて「私って実は、嫌なオールド・ファン気取りだったんか……」と、自分でもちょっとショックだったり。
でも2作目3作目と観る度にユーモア度やトンデモ度が増していき、とくにQがベン・ウィショーになった3作目以降はおちゃめな演出も増えて、すっかり居心地の良いクレイグ版ボンドが出来上がっていました。

クレイグ版ボンドは、ボンド自身には大してユーモアは無いんです。そのかわり、センスが無いからこその笑いってのもあって、そこはダニエル・クレイグの演技力と監督の力量が光るところ。
今回は、ユーモアセンスの無さを自虐ネタ?にしていて「自分でもわかっとるんかい!」と心の中でツッコんだし。MI6の受付で、不愉快そうに「ボンド……ジェームズ・ボンド」と名乗ったり。いままでで一番、笑ったんじゃなかしらん。
その代わり、キメるところはビシッと冷徹にキメるところがさすがです。

私がコネリー版ボンドが好きな理由は、色気もユーモアもあるのにやっぱり人殺し、って危険な雰囲気があるからです。
ブロスナンまでの他のボンドは、この「人殺し」感がちょっと物足りないんですよー。特にブロスナン版ボンド。
ピアース・ブロスナンって好きですけど、彼のボンドは華麗すぎて人殺してる気がしないんですよね。ブロスナンは人殺しより詐欺師が似合う。その意味では「スパイ」っぽくはあるけどさ。

でも00ナンバーは「殺しのライセンス」なんですよ。任務のためなら人殺ししてもOKなんですよ。
いや警官だって身の危険があれば犯人射殺したりするだろう、って言うそこのあなた!
警官だろうが犯人を射殺した場合は正当性を問われるんですよ、映画やドラマで見えないところで調書取られたり報告書書いたりしてるんです。

でも、くどいよーですが、00ナンバーは「殺しのライセンス」。正当性とか関係なしに、任務のための人殺しはOKなんです。
どっちかつーと、スパイというより「暗殺者」。
その点、クレイグ版ボンドは、人殺し感が半端ない。
そして色気とユーモアは、演出とダニエル・クレイグ自身が年を重ねてキャラを練り上げて身に着けていったから、今作では最高潮。
ま、色気の方は若い子がどう思うかは、映画内でカッコ可愛いパルマちゃんによって証明されちゃってますが、観てるこっちはダニエル・クレイグと一緒に歳とったんで、十分色っぽい。
確かにショーン・コネリーとは違う、違うけど、私にとってのジェームズ・ボンドに必要な要素は全部そろってる。

はい。お気づきの通りです。
ショーン・コネリーの次に、ダニエル・クレイグのボンドが好き
『ノー・タイム・トゥ・ダイ』で、遂に自信をもってそう言えます。

コネリー版ボンドになれなきゃ、クレイグ版ボンドになりたい。
私も、” I know…” って惚れた女に言って死んでみたい(落ち着け)
今生で女に生まれるまで、前世では紀元前から3000年くらい繰り返し男やってたらしい私ですが、一回くらいそんなカッコいいセリフ言って死ねたのかしらん。いや、できてないから、やってみたいと思うんだろうか。

……ちょっと話がズレましたが、とにかく、そんなクレイグ版ボンドは今作で終了です。
世間ではもう次のボンド役は誰だ!とざわざわしてます。
不思議です。
なぜ、ジェームズ・ボンドは役者を替えて作り続けることが当たり前なのか?

……いや、私にもさっぱりわからないんですけどね。
でも、ジェームズ・ボンドは、とにかく世界にいなければならないキャラクターのような気がします。映画館で、ふとそう思った自分がいました。

強いて言えば、007は常に作られたその時代を纏っているキャラクターだからかもしれません。同じキャラクターだからこそ、時代の変遷がよくわかる。
だからこそ、ボンド役者も演出も、時代に合わせて変わらなきゃならない。
今みれば、コネリー版ボンドはやっぱりあの時代の映画です。古いなーって思うことも多々あります。

それでも、やっぱりボンドはボンドなんだから、変わってほしくないとこもある。
色気があって、女にも男にもモテる男でいてほしい。
高級スーツとタキシードを着て、高級車を乗り回していてほしい。
ガジェットは必須、頭が良くて腕っ節が強くて、世界を救う人殺し。

そういう男なんて世界から消え去れ、という時代が来るまでは、ジェームズ・ボンドは永遠に作り続けられる気がします。