前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『グリム・ブラザーズ スノーホワイト』シガニー・ウィーバーはサム・ニールをどうしたかったのか

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2012年はおかしな年でした。なにせグリム童話の「白雪姫」を元にした映画が、2本も公開されたんですから(B級でもう1本あったらしい)。
1本は白雪姫がクリステン・スチュアートで、継母のシャーリーズ・セロン様とガチンコ対決する『スノーホワイト』。
もう1本は白雪姫がリリー・コリンズで、継母がジュリア・ロバーツの『白雪姫と鏡の女王』。こちらはなんと言っても、監督がインド産の鬼才ターセム・シンなので、とにかくビジュアルが素晴らしかった。
そして両方に共通しているのは、女性陣が自立していて逞しく、王子含め男性陣は添え物、というところ。
この辺、時代の変化を感じます。受け身のプリンセスは、用なしになりました。

でも実は、そんな時代を予感させる映画が、すでに90年代にあったんですよ。継母の存在感が大きく、父親や王子的存在はひたすら軽く、7人の小人は解釈を変え、白雪姫は最後に継母としっかり対峙する。
それがこれ、『グリム・ブラザーズ スノーホワイト』。アメリカではTV映画でしたが、日本では劇場公開されていたので、私、映画館で観ました。
だって、継母がシガニー・ウィーバーで、白雪姫の父親がサム・ニールなんだもの。

誰もが知っているグリム兄弟の名作童話「白雪姫」を、1812年に発表された原典に忠実に、その残酷さと狂気の世界を再現したファンタジー・ホラー。監督は「インターセプター」のマイケル・コーン。製作は「ターミナル・ベロシティ」のトム・エンゲルマン。撮影は「嵐が丘」(92)のマイク・サウソン、音楽は「ケーブルガイ」のジョン・オットマン、美術は「ハマースミスの6日間」のジェマ・ジャクソン。主演は「コピーキャット」のシガニー・ウィーヴァーと「あなたが寝てる間に…」のモニカ・キーナ。共演は「恋の闇 愛の光」のサム・ニール、「マイアミ・ラプソディー」のギル・ベロウズほか。

1997年製作/100分/アメリ
原題:Snow White
配給:ギャガ・コミュニケーションズ=ヒューマックス・ピクチャーズ
(映画.comより)

はい、前回の『N.Y.犯罪潜入捜査官』を観た勢いで、DVD引っ張り出してきちゃいました。
この映画でのサム・ニールは、打って変わって、後妻に翻弄されるだけの男なので、ファンとして面白みはないのよねー。
まあでもサム・ニールって、女性に翻弄されるばかりの役っていうのが結構あって、その辺は前回書いたセクシーさに欠けるところが影響しているかもしれません。寝取られ夫の役も多いし。

で、この映画でとにかく目立つのは、シガニー・ウィーバーの継母なんですね。
この継母、彼女の背景や内面がまったく説明されず、シガニー・ウィーバーという配役一本で納得してもらおうという、「ね、わかるでしょ」な役なんです。他のキャラは、それなりにわかるようになってるんですけどね。

でも、そんなこと、シガニー・ウィーバーが怖くて言えません。
もうね、シガニー劇場なんですよ。彼女が演じる継母の狂気が全てです。
ちょっと冷静になると、彼女が一人でくるくる回ってるだけって絵面ではあるんですが、迫力が……。
「そういうものなのよ、文句ある?」と言われてるような圧が、怖い。

元々、子供向けにソフトになった内容ではなく、グリム童話の原典にある残酷描写を描こうというコンセプトで作られた映画です。
彼女はそれをしっかり表現していて、過剰なまでに狂気の継母を演じています。
今でこそ、グリム童話は実は残酷だと、頭にインプットされているんですが、当時は結構ドン引きした記憶があります。久々に観ると、落ち着いて見られるというか、さほど驚かなくなっている自分がいました。
まあでも、それでもシガニー・ウィーバーは手が付けられない感じで、めちゃくちゃ怖いんですが。

特にですね、白雪姫の父親への仕打ちがひどいんですよ。これは、2012年の作品にはなかったと思います。
直接手を下してることを考えれば、白雪姫に対するものより、酷い。精を搾り取られたあげくに、十字架に括られて逆さづりですよ。

サム・ニールの出演を推したのはシガニー・ウィーバーだったと、パンフレットに書いてあったと記憶してますが(ちゃんと探して確認しろ)、役柄から考えて彼を推したのなら、彼女はサム・ニールを虐待してみたかったのかと邪推したくなるんですが、どうなんでしょう。
なんとなく、その方が面白いかな、と思う私のサム・ニール愛は、深すぎて水圧で歪んでます。