いまだヴァン・ダム映画をあさって観てるんですが、癒されてばかりなので内容がまとまらず(これはこれで映画の力のすごさ)。なので、ヴァン・ダム以外に観た他の映画の話を。
『羊たちの沈黙』大好きな私なので、刷り込みのようにジョディ・フォスターも好きなんです。全部とは言いませんが、結構出演作は観てるつもりが、この映画は存在自体知らなかった。
彼女の主演にしては珍しく、日本ではビデオスルーだったようです。内容が『ジョン・ウィック』に出てくるホテル・コンティネンタル*1を連想させるので、そのあたりが微妙と判断されたのか、それともフォスター渾身の老人演技が売りにならないと思ったのかわかりませんが。
アメリカでも大きなヒットはせず、可もなく不可もなくという感じ。
オスカー女優ジョディ・フォスター主演による近未来クライムアクション。暴動が日常と化した近未来のロサンゼルス。高額な会費と引き換えに最新医療と身の安全が保障される会員制闇病院「ホテル・アルテミス」には、傷を負った犯罪者たちの訪問が後を絶たない。ある日、銀行強盗で致命傷を負った兄弟を受け入れたことから、ホテル・アルテミスは開業以来最悪の事態に見舞われる。共演に「ブラックパンサー」のスターリング・K・ブラウン、「キングスマン」のソフィア・ブテラ、「ジュラシック・パーク」シリーズのジェフ・ゴールドブラム。「アイアンマン3」の脚本家ドリュー・ピアースが監督・脚本を手がけた。
でも私、すごく面白かったんですよ。
キャラクターは濃いし役者もいい。ホテルの設定も面白い。ホテルという密室で、人物たちの交錯する思惑、というシチュエーションもいい。
なんと言っても、ジョディ・フォスターの演技が圧巻で惹き付けられっぱなし。さすがの貫禄です。
最後のシーンもカッコよかったなー。セリフの日本語訳は「キラキラにして」。CS放送で英語字幕がなく自信ないんですが、"Keep a Christmas Eve party"かなあ。分かる方いらっしゃったら、教えて下さい。
でも、観終わって「めちゃめちゃ、面白かった!」と思ってから、ふと、冷静になって気がついた。
主要キャラの背景や関係は、セリフでの説明すらほんの少しで不明瞭。後半に入ってからは、え、そんなに深い思い入れあったの? と言うくらい、突然ドラマが盛り上がる。
逆に、たいして重要キャラじゃないボスの末っ子は説明過剰。親父を病院に入れるだけなのに、あの自己陶酔的な親子の会話はなんなんだ。
そして出来事は唐突に起こり、唐突に終わる。特に、あの警官はいったい何のために出てきたの? 伏線にもなにもなってない。
えーっと、よく考えたら、なんじゃこりゃ?
脚本のせいか? いやでも、ショボい脚本でジョディが出るか?
あ、製作陣が本気でヒットさせる気満々のメンバーだ。だから人が集まったのか。
じゃあ編集で失敗したのか? どこのどいつだ編集は? あ、大した仕事してねーや。
やっぱり監督のドリュー・ピアースのせいか。自分で脚本も書いてるんだから、途中で気づけよ!
この映画でやりたいことはよくわかるんです。
しかもそれに、キャラクターと役者が見事に合ってるんですよ。わき役に至るまで、ほぼ全員が。でも物語がちぐはぐ。
この映画からは「もうこれ以上どうにもできないから、お願いだからわかってくれ!」という監督の声が聞こえてきそうです。
それに対して「うん、わかったよ!」と、私の対映画用セイフティネットが、無意識に応えてしまったらしい。
私のセイフティネットは、基本「ダメなとこもあるけど、ここがイイよね~」と意識して発動するのですが、時々無意識に発動してしまい、大絶賛した後からダメなやつ(大抵、人から冷静に指摘される)だと気づいて、自分で自分に呆れることがあります(でも好きな気持ちは変えない)*2。
こういう時に、私は映画愛はあっても映画を見る目は大したことねーな、と思います。
だってさー、この布陣で楽しむなって方が無理じゃないですか!(開き直り)
心に傷を持っててちょっと病んでる、口の悪い老闇医者をジョディ・フォスター 。
その助手で自分は医療従事者だとやたら強調する、たぶん元はかなりヤバい系犯罪者の、デイヴ・バウティスタ。巨漢と小柄がバディというのが、画としてよくハマってる。
そして真っ赤なドレスでバトルする暗殺者に、ソフィア・ブテラ! 人殺し稼業がこんなに似合う役者もなかなかいない(褒め言葉)。
ドレスのスリットが深いのは、ファッションでもお色気でもなく、戦闘仕様なので騙されないように。
とどめに、不意打ちのように出てくる犯罪組織のボスでホテルのオーナーが、ジェフ・ゴールドブラム。
登場シーンでの顔の見せ方は、「ほら!みんな大好きゴールドプラムだよ!」というあざとさ満載なんですが、これにヤられた自分が素直すぎて恥ずかしい。
それに、カメラが上手すぎる。
全体的にトーンが暗いんですが、要所要所に入る色が効いてるし、カメラの寄せかた引きかたが、とにかくキャラクターの心情を一番イイ姿で映すんだという気合いに満ちている。
この撮り方こそ、私にキャラクターの背景を深読みさせた原因なので(他責にする)撮影監督調べたら、『オールド・ボーイ』や『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』を撮った人、チョン・ジョンフンでした。そりゃ上手いわ。
私、以前やたら撮影監督にこだわって、撮影監督で映画追っかけてた時期があり、「脚本も監督も演技もダメでも、撮影監督が良ければ映画として成立する」というのを持論にしていました。
いまはさすがに、それだけじゃマズイだろと思ってますが、やっぱり画の見せ方がうまいと、他のアラをかなりカバーするので、とりあえず2時間最後まで見れちゃうんですよね。映画って、そもそも見せてなんぼのものですし。
ついでに美術スタッフも、関わった過去作品はSF、ホラー系でなかなかハイレベルでした(今回悔しくてスタッフ調べた)。
そりゃ騙されても仕方ないよね!(騙してない)
物語の機能不全を、役者と映像が全力で補ってるこの映画。後から思うと痛々しい出来なんですが、わりとこういう映画が好きな私です。
でもなー、これがビデオスルーなら、『二ツ星の料理人』こそビデオスルーでいいんじゃないの?
あ、人が殺されない映画を差別してるんじゃないからね!
↓セイフティネットの使い方例