前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン』誰も愛してくれないと思ったらヴァン・ダムを見ようという話

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復職三週目で、脳が煮えているどころか胃痛まで起こしてしまい、ホントに復職大丈夫かよと思う今日この頃です。
その一方で、ヴァン・ダム熱というか、ヴァン・ダムにどうも癒しを求めているらしく、Amazonでいくつか円盤を買ってしまい、それすら待ちきれないのでこうなったら『その男ヴァン・ダム』*1でも観るかと思っていたら、AmazonPrimeで見つけたのがこれ。
正確には映画ではなく1話30分×6話のミニシリーズ、AmazonPrime のオリジナル作品になります。

もしもあの映画スター、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが実はシークレット・エージェントだと言ったら信じてもらえるだろうか?彼の映画界での活躍はすべて裏の仕事の隠れ蓑だと言ったらどうだろう?信じられない?だとしたら赤っ恥だ。このシリーズはそんな彼の裏の顔の物語だからだ。
(AmazonPrime Videoより)

 

 おそらくセルフパロディ物を2度も作ったのは、ヴァン・ダムぐらいじゃないでしょうか。
ヴァン・ダムはもはやアクション俳優というだけでなく、自分自身を「ジャン=クロード・ヴァン・ダム」というコンテンツに仕上げました。 

しかしまあ、クレジットをみて驚いたのなんのって。
ヴァン・ダム本人がエグゼクティブ・プロデューサーなのは想定内でしたが、何を血迷ったのか、そこには、名匠リドリー・スコットの名もあったのです。
つまり、このドラマはスコット・フリー・プロダクション*2が製作しているわけで。そのためか、作り自体はちゃちではなく、場面場面を切り取ってみれば、むしろ普段のヴァン・ダム映画よりクオリティは高いかもしれない。
とはいえ、こんな企画に一体誰がGOサインを出したのか。
アマプラのサイトには、シーズン1とちっちゃく書かれてますが、もちろんシリーズ化は打ち切りだ!

セルフパロディが散りばめられた作品なので、過去のヴァン・ダム作品をよく知らない人が観ると、面白がるポイントがよくわからないかもしれません。
いや正直、熱心なヴァン・ダムファンの皆さんに比べたら、私のヴァン・ダム愛なぞ大したことはないので、観て全ての元ネタがわかると言うほどではないんです。
でも、ありがたいことに『タイム・コップ』*3ネタが中心なので嬉しかった。だって私、封切り日に観に行ったんだもーん(愛の浅さを年季でカバーしようという、さもしいマウント)。

ヴァン・ダムのセルフ・パロディは、自分の出演作どころか、実人生を丸ごとパロディにしているところがなかなかエグイ。
『その男ヴァン・ダム』でも、映画で描かれていた00年代の人気低迷はもちろん本当だし、私生活のゴタゴタも事実に基づいていたようで。
この時のヴァン・ダムはちょっと痛々しくて、観てるこっちも泣けてきます。

ただ、今思えば、あの頃の私はヴァン・ダムに対して上から目線だったんですよね。だって「ヴァン・ダムかわいそう、頑張れ!」って泣いてたんだから。
でも『ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン』でのヴァン・ダムは、なんだか楽しそうだ。
今の自分と見比べて、羨ましくなるくらい、楽しそう。

『その男、ヴァン・ダム』もそうなんですが、『ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン』のヴァン・ダムは、自信を失って誰にも愛されない自分に嫌気がさしてます。
そして色々事件を通して(そこは書かんのか!?)、彼は自分を見つめなおし、自信を取り戻して「自分で自分を愛する男」になる、というもの。

これ、結構すごいことだと思います。
誰かの愛や友情のおかげで、立ち直ったり自信を取り戻すんじゃないんですよ。あくまで自分で内観して、自分を取り戻す。
『ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン』で起きてる事件はもちろん解決するんですが、ヴァン・ダムの自信回復は、あくまで彼の心の中で行われています。事件解決=自信回復じゃない(ニアではあるけど)。
いやもう、ストレートに作ってますからね。
ヴァン・ダムのインナーチャイルドと、今の彼との邂逅シーンは、精神分析やスピリチュアルで言われていることを映像化したらこれじゃないのっていうくらい、直球ど真ん中です。

私たちは誰だってそうですが、特に、他者に観てもらって成り立つ職業でスターになろうなんて人の中には、心の根っこに過剰なまでの「誰かに愛されたい」願望があるんじゃないかと思ってます(個人的偏見ですが、トム・クルーズはその最たるものだと思う)。
この「愛されたい」は「評価されたい」とも似ていて、愛されることで自己肯定感を得ようとしているんですよね。

でも自己肯定感って、愛を「誰か」という外に求めている間は、なかなか得られないんですよ。「愛されなくなった」と思ったとたんに、簡単に崩れてしまうから。だから愛は、まず自分で自分に向けてあげないといけない。
でもそうなるまでには、自分の深い認めたくない部分をゴリゴリ掘り起こす羽目になるのでかなりキツイし、その状態を社会生活の中で保つのも大変です(経験者、というか真っ最中)。

でも、ヴァン・ダムってゴタゴタした2000年代を経験して、「愛されたい」から「自分はこれでいいんだ」「自分で自分を愛せばいいんだ」に、マインドチェンジできた人なんじゃないかと思います
少なくとも、そうあろうとしている気がする。
微妙な知名度、微妙な出演作、褒められる(?)のは昔の作品ばかり。
でも、それがなんだって言うんだろう?

ヴァン・ダムは、たぶん、自分のことが大好きなんですよ。
昔の、ナルシズム的な自分大好き、ではなく。自分の良いところも悪いところも、丸ごと好きなんだと思います。
だから、観ていて、作品の出来はともかく(しつこい)、ヴァン・ダムの姿は悪い気がしないんですよね。辛そうじゃないというか、自然体(??)というか。 

こんなヴァン・ダムは、たぶん世界中の誰もが知ってて皆がみてる大作で主演なんかできないけど、一人の人間としては幸せそうだ。
最終話のヴァン・ダムの笑顔はステキです。

やあ!
俺はジャン=クロード・ヴァン・ヴァレンバーグ*4、よろしく!

そして、そういう人は、なぜか必ず誰かに愛されてしまうのだ。

その内の一人が、ここにいる(浅いけどね!)。

www.amazon.co.jp

 

*1:2008年に故郷ベルギーでヴァン・ダムが製作した、自分の実人生をセルフ・パロディにした自虐映画。監督はヴァン・ダムの大ファンで、コメディと思って油断してたら、愛しか感じなかった

*2:リドリー・スコットの制作会社。名作多数

*3:ヴァン・ダムが鼻高々だった1990年代のSF映画。タイムワープを悪用する奴を捕まえる警官役。ツッコみどころ満載

*4:ヴァン・ダムの本名はジャン=クロード・カミーユ・フランソワ・ヴァン・ヴァレンバーグ。ドラマと違って、お母さまは健在です